c71は生きている

荒いまま思ったことをしがらみなく推敲しないで書く

伴侶のドロップアウト

伴侶は、東大を卒業しなかった。

それは、うっかり知り合った女の人を養うことになったからで、のちに、その女性に軟禁されることになる。

彼が中退しなかったらどんな人生を送ることになったんだろう?

わたしたちは、二十歳のころ、同じ場所にいたけれど、知り合うことはなかった。彼と私がそれぞれ順風満帆だったら、今、一緒に暮らしていないかもしれない。

私たちが知り合ったのは、彼と私が同じ経験をしたからだ。同じ経験が、二人を引き合わせたともいえる。

 

中退と、卒業と、どういう風に人生が変わるのだろう?同じ人間を比較することができないから、それはいくら考えても謎のままである。

彼は、卒業していたら、きっと官僚になって、お見合いで知り合った女性と結婚して、家を建てて、子供をもうけて、お受験をさせて、私立に通わせる資金を稼ぐために、ただ働いていたかもしれない。会社の上司や同僚も、同じような環境で育った人たちで、彼は息が詰まっただろう。

大学受験で、志望校に受かった人と、おしくも受からなかった人と追跡調査をすると、同程度の収入になるらしい。そういう調査をみたことがある。

 

彼の大学の同期は、それぞれ出世しているだろうけれど、彼が良く交流していた人たちは、それぞれはぐれモノになっている。

だから、彼も、卒業していて、あの女性に出会わなくても、結局、どこかで道を踏み外している可能性がある。

 

今の生活には満足しているけれど、彼の成績表を見る機会があって、こんなにがんばっていたのに、中退、なんてもったいないんだろうと思った。

 

彼はずっと、本当に学びたがっていて、隙間時間で、一生懸命勉強をしている。

物理、語学、法律、どんな分野も貪欲に、辛抱強く勉強していて、ときどき胸が痛くなるほどだ。

彼が学びたいと思う気持ちが切ない。

だから、大学で勉強してもらいたいなと思う。

 

「もし」を積み重ねていっても、結局今と同じ状況に収れんするのか、確かめられたら安心するけれど、そうではないから、今できることをする。今できることもあまりないけれど、自分には選ぶことができると信じる余地があるかが大事なのだ。