c71は生きている

荒いまま思ったことをしがらみなく推敲しないで書く

あっこっこ

「あっこっこ」とせがまれるので、だっこをした。

子供は、11キロになった。重くておろすとまたあっこっこといって、両手を伸ばす。

小さい手のひらと細い指で、私の両手をつかむので、私はまたわきの下に手を入れて、これまた華奢な胴を支えて抱き上げる。

あっこっこをすると、まじめな顔をしてうなずく。そして、首に手を回して抱きついたり、また、両手を話してのけぞったりして遊ぶ。

 

最近は、寝る時間になっても、もっぱら「ねんねちない(ねんねしない)、ねんねちごう(ねんね違う)」と言って横になることも嫌がるので、「ねんねちないんだよね、いいよ、ねんねちないでおこう、その代わりあっこっこしよう」と言って膝に乗せる。そうすると、すぐ眠ってしまう。

 

眠るときは怖いのか、まだ遊びたいのか、いつも泣いている。泣いているので暑くなって汗びっしょりになる。大人と違って汗ににおいはしない。ただの水みたいな感じだ。

 

髪の毛が地肌に張り付いているので、タオルで拭いてやる。ついでに背中も拭いてやる。一度寝たら起きない。やっぱり真面目な顔をしている。

こうやってごまかされるのもいつまでかな。あっこっこという言い方もいつまでしてくれるかな。

 

つたない言葉が上手になっていくとき、嬉しさよりも切なさのほうが勝る。

また、私の手から一つ離れたのだと思うからだ。

育てやすい子供なんだろうか、早く大きくなれと思うよりも、あと十五年くらいしか一緒にいられないのだと思う気持ちのほうが強い。

大きくなればなるほど、その違う景色が見えて、それぞれの楽しさや嬉しさが待っているのだと思うけれど、今のこのひと時が短すぎてめまいがする。

一瞬の移ろいの美しさ。頬の丸み。とがった唇。うまくいかないチョキ。一から数えて行って、十まで言えるようになっているけれど、たまに八を飛ばしてしまう。鼻にしわを寄せて、目を細めて笑うこと。

外出先で泣いている子供がいれば「こちょこちょ」という。こちょこちょしたら、泣き止むからしてあげたいという意味らしい。

わんつーぴーぽーふぁいぶ。えーびーしー。おいで、あしょぼ(あそぼ)。

子供は同じ年頃の子供を見つけると一緒に遊びたがる。遊びたいときに、自分の持っているものを分けようとする。大切に持っていたねこじゃらしとか。しゃぼんだまとか。パズルだとか。右手に持って差し出して相手が気づくまでずっと待っている。

ねこじゃらしのことはこちょこちょと呼んでいる。

どんなときにも道端に伸びているこちょこちょには気が付く。

あっこっこをしていても、あー、と言って、あっこっこをしている手からすり抜けようとしてもがいて降りる。そして、こちょこちょ!と言いながら、猫じゃらしを引き抜こうとする。

秋でも春でもそこにこちょこちょがあるならば、手を伸ばすのだ。強い茎だから、うまくちぎれずに、困っていることもある。だから、そっと手伝うと、「てってん、すごーい、じょうず」と言って頭をなでてくれる。てってんというのは、私への呼称だ。てってをつないで歩くよとしょっちゅう言っているからだろうか、私のことはずっとてってんで、ママというときもあるけれど、それは不満なことがあって文句を言うときが多い。てってんという呼び名もいとおしい。

 

走っていって、転ぶと、自分で「だいじょーぶ?」という。大丈夫じゃないんだろう。いつも「大丈夫?」と声をかけられているから、自分に大丈夫?というらしい。

 

一週間前にも、「大丈夫?」を連発していた。大丈夫を連発するときには具合が悪いということなので、病院に連れて行ったら、抗生物質を出してもらった。やっぱり具合が悪かったらしい。知っている言葉を工夫して、自分で自分の状態を表現しつつある。

どうやって子供は言葉を見つけるんだろう。不思議で仕方がない。音がつながって言葉になること、そして言葉に意味があるってことが、どうして結びつくんだろう。

 

数を教えたらあっというまに覚えた。音と、数字、文字が一対一対応になっているということをすぐ理解していた。数を言えるだけじゃなく、数字を読めるし、一個とか二個とか、物体の数と数字が関連している、そういうことも分かるようだ。

 

楽しい時ほど真面目な顔をして、むすっとして見える。

おいしいものを食べるときにも、おままごとの道具を取り出すときにも、むすっとした真面目な顔をして集中している。もっと嬉しい時には鼻の下を伸ばす。鼻にしわを寄せて目を細める。

 

近所の人に遊んでもらうと、喜んで初対面でも抱き着きに行く。まだ誰にも意地悪をされたことがないから、抱擁しようとしたら抱擁されると信じている。

 

不明瞭だったおしゃべりもずいぶん明瞭になって、言っていることがわかるようになってきた。

super simpleとcoco melonなどの英語の歌のYouTubeばかり見せているので、英語の歌を歌うようになった。もちろん私よりも発音はずっと良い。

coco melonは、家族がいて、歌いながら踊るという設定なので、それを見ながら踊るようになった。The Animals Danceなんて、本当に上手に踊るようになって、最初見たときにはびっくりした。

 

お風呂に入るときには「いやや」と言って、走って逃げる。追いかけると笑いながら逃げる。しゃぼんだまのように笑い声がはじける。しゃぼんだまのことはちゃぼんだと呼ぶ。

上手に走れる。小さいからO脚気味だ。小さい子はみんなO脚だということも私は知らなかった。

 

お風呂に入ろう、ちゃぷちゃぷしよう、と声をかけると、「いやや」と言って走り去る、そのときに、肩をつかんで捕まえて、あっこっこをするとき、てってんのことを小さいあんよが蹴りつける。痛いなと思って、ちょっと身を離して、ついでに高い高いをしながらお風呂に連れて行って、お風呂でも遊ぶ。

 

今はお風呂のお湯に顔を付ける練習をしていて、お湯をかけたり、こうやってぶくぶくするんだよ、といって、手本を示す。それがおもしろいのか、今度は私の髪をつかんで、無理やり私の顔をお湯に突っ込む。ひどい拷問だなと思いながら、ぶくぶくすると「ちゃぼんだ(しゃぼん玉)」と言って喜ぶ。

 

 

コロナで、保育園に行けないから、朝十時に公園に行って、遊んで、お水を飲ませておやつを上げてご飯を食べさせて昼寝をさせて、夕方からはYouTubeタブレットのゲームをさせて、夕ご飯を作って食べさせる。食べた後はお風呂に入れる。夕食の時間が早いから、おやつも食べさせる。「びっかーん(みかん)」がいいとか「いんご(りんご)」がいいとか、「アナナ(バナナ)」がいいとかいうので何かしら常備している。

そして寝かせる。あっこっこをして膝にのせて寝るまで髪をなでて顔を眺めている。